日時:2025年6月15日 会場:王子スタジアム 対戦:関西学院中学

6/15王子スタジアムにて開催された2025関西中学アメリカンフットボール選手権大会決勝。啓明学院は関西学院中等部と対峙した。
試合序盤は信じ難いほどの苦境に立たされた。開始わずか数プレーでのファンブル、インターセプト、そして特別チームでのミス。前半早々に0対20と絶望的な点差を背負う展開となる。さらに、雨上がりで重く湿った空気、強く吹く風が選手たちの集中力を試す。だが、この日の啓明学院には、決して下を向かない精神力が宿っていた。
オフェンス陣が少しずつリズムをつかむ中、最初に光を放ったのはディフェンスだった。CB山田と西村の果敢なパスカット、LB山本の鋭いチャージ、そしてSF早川のインターセプトなど、幾度もピンチを跳ね返す堅い守りでチームに流れを引き寄せた。特にLB近藤のQBへの鋭いタックルや、LB今井による相手ランプレーへの素早い反応は、スタジアムに響く激しいヒット音とともに観客を沸かせた。
そして、ついにオフェンスが動き出す。第2クォーター終盤、敵陣17ydsからQB早原が左サイドを駆け抜けタッチダウン。ようやく挙げた得点に、ベンチもスタンドも大きく沸いた。
後半に入り、啓明学院はさらに勢いを増す。WR西村、TE村上らへのパスが次々と決まり、着実に前進。第3QにはQB早原からTE村上へのロングパスが絶妙なタイミングで決まり、再びタッチダウン。スコアは13対20、あと一歩のところまで迫る。
ディフェンス陣もこの時間帯は圧巻のパフォーマンスを見せた。LB近藤や今井が立て続けに相手のランプレーを阻止。関西学院に追加点を許さず、逆転への望みを繋ぎ続けた。
そして、ついに訪れた第4クォーター。残り時間わずか、7ydsからの自陣攻撃で、WR西村への46ydsロングパスが決まる。さらに村上への26ydsロングパスも成功。まさに「ここしかない」という場面での大勝負に打ち勝ち、ついにタッチダウン。スコアは19対20。残り57秒、TFP(トライ・フォー・ポイント)で1点を狙えば同点、2点を狙えば逆転。そして監督が出した答えは「攻め」。2ポイントコンバージョンでの逆転を選択した。
ベンチ、フィールド、スタンド、全てが祈る中、モーションから右サイドへ走り抜けた西村へ、QB早原が渾身のパス。それを見事にキャッチ!21対20、ついに逆転に成功。
残りわずかな時間、相手の猛攻をディフェンス陣が気迫の守備で押し返す。そして、最後のプレイ、LB山本の突撃がプレッシャーとなり、パスが決まった直後にタイムアップの笛。大歓声の中、啓明学院は6年ぶりの優勝を果たした。
この試合は、決して一人のスターの活躍ではなかった。序盤の絶望的な展開にもかかわらず、誰一人あきらめなかった。オフェンスは粘り強く前進し、ディフェンスは体を張って守り抜き、ベンチの仲間たちは声を枯らして応援し続けた。そして監督・コーチ陣の勇気ある決断。それらすべてが奇跡の逆転劇を生んだ。
「全員フットボール」――それを体現した感動の決勝戦。関東代表との戦いが残っているとはいえ、この日の啓明学院はすでに、心の中では“全国一”の称号にふさわしいチームだった。心からの拍手を送りたい。関西大会優勝、本当におめでとう。そして、感動をありがとう。









